夢見るキスと、恋するペダル
3 茜色の空
次の日。
放課後になり、急いで自転車置場に向かった。

昨日の今日で、迷惑に思われるかもしれないけど……。

タイヤを確認したら、空気はオッケー。
今日はパンクしてないし、立ち漕ぎしてペダルを踏むと、浮き足立つ気分がさらに上がる。
青空が心地よい。

コシノサイクルに到着し、店の中をそっと覗いた。
航さんの背中が見え、赤い自転車のスタンドを立てた。

「こんにちは……」

航さんが、勢いをつけて振り向く。

「来たの」

「うん。すごくいい天気だよ。秋空が」

見て来た景色を伝えると、航さんが工具を台に置き、腕で汗を拭っていた。
そんな仕草に、昨日の妄想がリアルに浮かぶ。

「いいなあ。今の時期気持ちいいもんな」

「ちょっと暑いけどね。夕方なら涼しいかなぁ」

まだ残暑の空気は残っている。
航さんは、少し考えて私の顔を見た。

「暇なら、夕方河川敷行く?」

「えっ。い、行く」

や、やった。デートみたい……!
18時半、河川敷で待ち合わせの約束をして、一旦家に帰った。
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