東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
寄席小屋と呼ばれている演芸場の中に入ると、すでに演芸が始まっていた。

落語家が座布団のうえに座って落語を行っていた。

「今やっているのは、『藪入り』って言う古典落語だよ」

隣に座っている村坂さんが小さな声で教えてくれた。

私たちの周りに座っている人はほとんどが年配の人ばかりだった。

ここにいる若い人は私たちだけだった。

落語家が身振り手振りで、時には声に強弱をつけて演目を演じている。

うわーっ、すごいな。

そう思いながら隣の村坂さんに視線を向けると、彼はじっと舞台のうえの落語家を見つめて場面によってはクスクスと笑っている。

全くの素人である私には落語のおもしろさはよくわからないけれど、村坂さんは楽しんでいるようだった。
< 101 / 271 >

この作品をシェア

pagetop