東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
焼きたてのクロワッサン
その翌日、私はナオと一緒にいつものカフェでおしゃべりをしていた。

「えーっ、何にもしなかったのー?」

昨日の出来事をありのままに話し終えると、ナオはガッカリしたと言う顔をした。

「何にもしなかったよ」

私がそう答えると、
「お酒飲んで、ご飯を食べて、さようなら…って、つまんないわー」

ナオは呆れたと言うように息を吐いた。

「つまんないって…」

私は息を吐くと、ストローでオレンジジュースをすすった。

「せっかく相手がお金を出してくれたのに?」

「社長を助けたお礼も兼ねてって言ってたわ」

「駅まで送ってもらったのに?」

「それは光明さんが勝手に…」

「名前まで呼びあったのに?」

「…だって、向こうが“副社長”は嫌だって言うから」

「もう、意気地なし!」

ナオはムキーッと怒った。
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