東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
電車に乗って水族館へ向かっている間も、私の気が落ち着くことはなかった。

「今日はいい天気ですね」

そう話しかけてきた副社長に、
「そ、そうですね…」

私は返事をすることが精いっぱいだった。

「天気予報を見たんですけど、昨日から梅雨明けになったんだそうですよ」

「へ、へえ…」

副社長も天気予報を見るのか…って、そりゃそうか。

「俺、水族館に行くの楽しみにしてたんですよ」

「そうなんですか…。

私も楽しみですよ、最後に水族館に行ったのは高校生の時なので」

そう言った私に、
「えっ、そうなんですか?」

副社長は驚いたと言うように聞き返してきた。

「アザラシの赤ちゃんを見に、女友達と一緒に」

ちょっと待て、“女友達”とかって言ういらん情報はなかったな。

別にただの“友達”と表現してもよかったはずだ。

でも、場合によっては男を連想される場合もある…って、何を言っているんだ。
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