東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
「特に予定はないですけども…」

そう答えた私に、
「じゃあ、一緒に行こう。

大丈夫だ、素人でも楽しむことができる」

村坂さんは言った。

いや、心配するところはそこではない。

私の返事はどうしたと言う話である。

勝手に話を進められたうえに、落語を見に行くことになったこっちの気持ちを考えてくれ。

「落語はとてもおもしろいんだ。

きっと桜井さんもそのおもしろさと魅力にハマってしまうはずだ」

「は、はあ…」

あー、もうどうでもよくなってきた。

とりえず、自殺すると言う選択肢はなかったことにホッとした。

「桜井さんのメアドかLINEのIDを教えてくれないかい?

詳しい日時を連絡したいから」

「ああ、はい…」

私は呟くように返事をすると、カバンからスマートフォンを取り出した。
< 99 / 271 >

この作品をシェア

pagetop