きみは宇宙でいちばんかわいい


「ばーか。違うから」


なんて、勝手にアレコレ妄想していたのに、そんなものは、彩芭くんの無慈悲な声が、粉々に打ち砕いてしまったのだった。


「きなこちゃんと俺、ふたりで、に決まってんじゃん」

「え?」


とても美しい顔が、口角と眉を上げて、どこか意地悪に笑んでいる。

その表情は、なんだかすごく、男子、という感じがしていて、それに気づいたとたん、いきなり脈拍数が上がった気がした。


「なあ、わかんない? 俺、いま、運命的な瞬間を一緒に過ごしてる女の子を、デートに誘ってんだけど」

「……で、と」

「じゃあ、あしたからのテスト、頑張ろうな。きなこちゃん」


放心状態のわたしを置いたまま、おかしそうにくつくつ笑うのを隠そうともせず、彩芭くんは踵を返して行ってしまった。

たぶん、かなり長い時間、かなりまぬけな顔で、その場にぼけっと立ち尽くしていたと思う。


彼のはちみつ色の髪は、夕方と夜のあいだの薄暗い時間帯でも、こんなにも綺麗にきらめくのだということを、はじめて知った。

そして、そのあいだからのぞく、青色のまたたきから、ずっと目が離せなかった。


なんとも美しい光景だった。

それは、彼の姿が見えなくなってからも、まぶたの裏に残りつづけ、しばらく剥がれてくれないほどに。




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