きみは宇宙でいちばんかわいい


夏休み、彩芭くんとふたりで出かけたことを、ずっと、朝香ちゃんには言えないままでいる。

別れ際に起こった、あの信じられない出来事だって、もちろん伝えられているわけがない。


彩芭くんは、朝香ちゃんの、好きな人。

そうだとわかっていながら、わたしはいったい、なんということをしてしまったのだろう。


こんなわたしと仲良くしてくれているだけでなく、柊くんへの気持ちを純粋に応援してくれている彼女を、裏切るようなまねをしてしまった。

あれは、不意の事故とはいえ、そもそもわたしが彩芭くんからの誘いをキッパリと断っていれば、未然に防げたことのはずだった。


幸いにも、新学期がはじまってからも、彩芭くんの態度が夏休み前とひとつも変わっていないことが、唯一の救いだ。

きっと、彼にとっても、あれは予想だにしないアクシデントであり、単に魔が差しただけだったのだろう。

それとも、イギリスでは、ああいうのも普通の行為なのかもしれないし……。


だから、なかったことにすればいい。

大切なファーストキスが、そんなふうに終わっていくことは少し悲しいけれど、なかったことになるのなら、きっと大丈夫。

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