きみは宇宙でいちばんかわいい
右手を上げ、颯爽と行ってしまった柊くんの後ろ姿を、なんとなくずっと見送る。
人混みのなか、時間を忘れてぼうっとしていると、いきなり、ぐん、と右の手首を引っぱられた。
その衝撃で、思わず体が前によろけてしまう。
「行こう、なな子」
「あっ、うん……、え?」
「なに?」
「久遠くん、待って、いま、なんて呼んだの?」
「なにが?」
「あの、いま、なな子、って」
「は? 聞き間違いじゃねーの、きなこちゃん」
久遠くんは、いつかの昼休みと同じように、それからずっと無言のまま、わたしの手を引き、足早に歩いていくだけだった。
どんくさいので、足がもつれないよう気を遣いながら、少し前を行く背中を眺める。
やっぱり、金色の髪が、綺麗。
でも、久遠くんは、それだけじゃない。
同じくらい、薄い色のガラス玉みたいな、瞳も綺麗。
もし本当に、人間が神様によって創造された存在なのだとしたら、彼は間違いなく、そのうちの最高傑作にあたるはずだ。
そういえば、久遠くんの言っていた、わたしに激似の人形とは、いったい何のことだったのだろう?
なんて、至極どうでもいいことを、なぜかこんなタイミングで思い出してしまった。