そのくちづけ、その運命
「実琴、おっはー!」

大学へと向かう坂の途中、後ろから思いっきり背中を押された。


「びっくりしたー!」


同じゼミに所属している今井文香。
大学でもよく行動を共にする一番仲の良い友人だ。


彼女は自分の主張を曲げず、自分の言いたいことを率直に言うタイプで、ときどき相手に気後れを感じさせるが、私は不思議と彼女と馬が合う。

私の相談事に対しても、いつもまるで自分のことのように親身に相談に乗ってくれる。


頼りになるアドバイザーだ。

「はぁーあっという間に終わるよね、土日。
レポートやった?」

「あ、やばい!私何もやってない!」

「お。珍しいじゃん。
大丈夫だよ、あの先生優しいから。それに今日までだからまだ時間あるし」

「だよね!なんとかなるよね!」

「うん、なるなる」

通常通り。

昨日はだれともしゃべらなかったから、文香との日常の会話に自然と笑ってしまう。



だけど、土曜日に自分の身に起きたことをどう説明すればいいのか、うまく伝えられる自信がない。

笑われるだけかもしれないし…

いや、文香はそんな子じゃない。

ないんだけど…

あぁー!
私は何をうじうじ考えているんだろう!


迷った末、思い切って代わりにこんな質問を投げかけてみる。

「文香ってさ…付き合ってる人いたりする?」







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