そのくちづけ、その運命
少し間をおいて、「そうだ。なんか飲む?…って言っても、今麦茶しかないや」


ドクドクドク…
私の手なんて全然女の子っぽくないし…
爪切っておけばよかった…。

顔赤くなってないかな。

もし仮に、顔が赤くなってなかったとしても、
すでに手遅れな気がする。

今日ここに至るまで、私の挙動や真人くんに対する視線…
すべてが「あなたのことが好きです」と取られて致し方ないものばかりだった。

まぁ、実際その通りなんだけど。

だから、今更クールに平静を装ったところで、真人くんは見抜いてるよね…

本当恥ずかしいな私。


台所から麦茶の入ったグラスを持ち、真人くんが戻ってくる。

「あ―ほんとごめん。今ちょっと部屋散らかってるんだよなー。
実琴が来るってわかってたらちゃんと片付けたのに」

再び彼の口から放たれた「みこと」という自分の名前に胸の鼓動が高鳴る。

実琴、実琴…

って、ん?

今聞き捨てならないひと言が。

「え。自分で呼んだんじゃ」

「まぁそうなんだけどね」

そう言ってハハっと声を出して笑う。

あ、笑った。その事実がなんだかたまらなくうれしくて、私もつられてクスクスと声を出して笑ってしまった。


「…あの、ずっと気になってたんだけど、名前、なんで呼び捨てになったの?」

「オレ、実琴って名前好きだから」

え?

「だって、かわいいいじゃん。木管楽器がメロディー奏でてるみたいで気持ちいいし。
みことみことみことぉーってずっと呼んでたくなる」

私の名前が好き?

まるで、私のことを前から知っていたような言い方。


「実琴、オレの話聞いてくれる?」
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