取り込む家
失われた記憶~翔也サイド~
目が覚めるとここがいつもの部屋ではない事に気が付いた。


俺は大きく呼吸を繰り返し、目玉だけを動かして周囲の様子を確認した。


全体的に茶色い部屋だ。


壁紙が張られていないようで、木がむき出しになっている。


ここはどこだ?


そう声に出そうとしたが、喉の奥から空気が抜ける音だけが聞こえて来た。


驚いて自分の喉に触れる。


しかし、その手は俺の喉に触れる事ができなかった。


手を持ち上げて確認してみようとしても俺の両手はどこにも存在しておらず、腹筋だけで上半身を起こして体を見てみると、自分の四肢が付け根からなくなっていることに気が付いた。


絶叫……する声も出せず、俺は大きな口を開けてそこから空気を漏らした。


ここはどこだ?


俺はどうしてこんな事になっている?


両手足は切断されたのか?


声帯も潰されたのか?


次々と浮かんでくる疑問に自分自身が押しつぶされていく。


俺は自分が横になっていたベッドに再び横になった。


体をまるめ、自分の温もりと心音を確認する。


しっかりと脈打っている音が聞こえて来て、思い出したように涙が流れ出た。


次に訪れたのは強い恐怖心だった。


一体なにがどうなっているのか全くわからない。


だけど俺は確かに誰かに攻撃され、この部屋に連れて来られたのだろう。


そうだとしか思えなかった。


俺はまた部屋の中を見回した。

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