取り込む家
気づかれないように笑ったつもりだったのに、優生がけげんそうな表情をこちらへ向ける。


「なんでもないよ」


あたしはそう言い、左右に首を振った。


あたしは優生の、人をほっておけない性格を好きになったんだ。


今みたいにあたしが洗い物をしているのに、自分はなにもしないというのが嫌なのだ。


その性格のせいで損をしている部分もあるハズなのだけれど、優生は損得で動くような人じゃなかった。


「さっきから、なにニヤニヤしてんだよ?」


優生の変わらぬ性格に頬が緩んでしまっていたあたしに、優生がそう聞いて来た。


「なんでもないってば。ほら、これで片付けは終わり。寝てていいよ?」


最後のコップを洗い終えてそう言うと、優生の両手が伸びて来た。


「やだよ、寝るなんてもったいない」


あたしの体を包み込みながら優生はそう言った。


爽やかな香水の香りが鼻をくすぐる。


昨日はお風呂にも入らずそのまま寝てしまったから、香水の匂いも取れていないのだ。


「ダメだよ。優生二日酔いでしょ?」


「じゃぁ、咲が看病してくれる?」
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