2人の王女と2人の騎士


「セラ!イグニスー!」

私の声はこちらに向かってくるティアの声でかき消されてしまった。…クライドはいないみたい。


「ティアどうしたんだ?」

「2人とも聞いてる?」

「何を?」



そう言ってティアは手に持っていた用紙を私たちに見せた。

内容は…




「舞踏会!」




もうそんな時期なのかと心踊らせた。ファルサリアでは毎年恒例の公式行事で、国中の貴族たちを集めて盛大に開かれる。私が楽しみにしているのは豪華な料理が食べ放題だって事。食べ放題…なんて魅力的な言葉なのだろう。想像するだけでよだれが出そうだ。



「去年はクライドとペアを組んだから、今年はイグニスとね」


ティアが私を見つめて微笑んだ。
私たちは4人で、毎年ダンスのペアを交換している。よりによって今年はクライドだなんて。こんな状況で楽しめるのか不安になった。



「楽しみになるわねセラ」

「そ、そうね!クライドに特訓の成果を見せて驚かせてみせるわ」




「セラ…」




イグニスは心配そうに私を見つめる。これ以上イグニスに心配をかける訳にはいかないし、何より先程の事は私の勘違いかもしれない。そんな風に気持ちを切り替えて舞踏会に臨むのだった。

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