あの夏の空に掌をかざして
 恋ってすごいな。


 ねえ、気づいてる?そんなことができるの、日向だけなんだよ?


「…これね、楓に選んでもらったの」


「設楽さんに?」


「うん!……今日のために、買いに行ったんだよ!」


 何だか、今日は素直になれる気がした。


 今も、素直に笑えた。


 日向は驚いたような顔をしたけれど、笑うあたしを見て、優しく微笑んだ。


「そっか」


 それだけ言って、あたしの頭を撫でた。


「………うん!」


 その時、陽ちゃんの、ワンワンという鳴き声がきこえた。


 そうだ、陽ちゃんにも、一言挨拶くらいしておこう…。


 そう思ったあたしは、隣の家の、陽ちゃんのいる庭へと向かう。


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