あの夏の空に掌をかざして

「イルカショーすごかったね」


「ね!すごい濡れちゃった~」


 イルカショーは初めてだったから、あたしの興奮も最高だった。


 モヤモヤしていた気持ちも、すっとんでいった。


 そしてイルカショーの後、あたし達は水族館内のお土産店に来ていた。


 魚のぬいぐるみとか、文具とか、お菓子とか。ここでしか買えない品がたくさんあって、どれにしようか迷ってしまう。


 あ…、日向の、匂い。


 ふわり、と香る、日向の香り。


 イルカショーの後、あたしだけすごく濡れちゃって、服も透けちゃったから、日向が上着を貸してくれたのだ。


 だから、不意に香る日向の香りに、まるで日向に抱き締めてもらってるような錯覚に陥ってしまう。


 あたしの腕より長い袖が、だぼだぼの上着が、あたしと日向の"体格の差"を知らしめている。


 日向も、男の子なんだ。


「ひな、た…」
< 168 / 203 >

この作品をシェア

pagetop