あの夏の空に掌をかざして
「でも、日向はまだ死んでないよね…?何であたし、ここにいるの?」


 思い返してみて、やっぱり日向は死んでいないはずだ。


 それなのに、ここにいるのは、おかしい。


「それは、最期ってことを伝えるためだよ」


「最期…」


「そう、最期だから、せめてお別れの言葉くらいは伝えられるように、"助けてくれた人だったモノ"が、説明にくるんだ」


 最期にそんな特典ついてくるんなら、こんなループに巻き込まれたくなかった…。


 そんな思いも、目の前の陽くんには筒抜けで、悲しそうに、申し訳なさそうに、眉を八の字にして笑った。


 …あ、今の顔、日向に似てるな。


 ああ、今、すごく日向に逢いたい。


「そろそろ時間だよ、あかりちゃん」


 その声と共に、体が光に包まれていくのを感じた。


 これも、きっと最後だ。
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