あの夏の空に掌をかざして
 8月23日日曜日、今日は親友の楓と待ち合わせをして、一緒にショッピングに行くことになっている。


「お財布よーし、リュックよーし、おっけ!準備かんりょ~」


 今日のあたしは、風通しのよい、シンプルな半袖のTシャツと、半ズボンというスタイルで、"友達と遊びにいく高校生"とは、とてもじゃないけど見えないだろう。


 まぁ、その洋服を買いにいくんだし、いっか。


「いってきま~す」


 お母さんに楓と遊んでくると伝えてから、家を出る。


「あ、あかりちゃん」


 声がした方を見ると、日向の家の玄関から、日向が出てくるところだった。


 日向は愛犬の陽(ハル)ちゃんにリードをつけていて、これから散歩に行くのだと容易に分かった。


 「明日は宿題をやらない」と昨日伝えたので、ちょっとだけ気まずい。でもちゃんと楓と遊んでくるって言ったからいいか。


 こんなときに鉢合わせするなんて、タイミングが悪いなあ。


「設楽さんと遊びにいくところ?」


「うん、日向は散歩?」


 日向は頷いて、陽ちゃんの方を見た。その慈愛に満ちた表情からは、本当に可愛がっている事が伝わっている。


 浜崎家が約10年ほど前から飼い始めたポメラニアンのメスは、推定12歳で、人間だと結構なご老人だが、今でもすごく元気だ。あたしも、物心ついたときから一緒にいるのが当たり前だったので、すごく可愛がっている。


「ねぇ、途中まで一緒に行かない?」


 あたしは、日向にそう提案した。何だか、まだ一緒にいたかったから。


 日向は快く承諾してくれて、あたし達は分かれ道まで一緒に歩いていくことにした。


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