あの夏の空に掌をかざして

「夢…みたい」


「夢じゃないよ」


 日向が、現実なんだと教えてくれる。


 日向の声に、胸に、存在に安心して、あたしは頬に、涙が伝う感触がした。


「ふ…ぅ………ひなた…ひなた………………ひな、た…」


「うん」


 嗚咽が漏れだしたあたしの背中を、ぽんぽんと優しく叩いて、宥めてくれる。


 声を殺そうとするけど、どうしても止めることができなくて、けれど、日向は優しく「うん、うん」と言うだけだった。


「あたし、も………ひなたが…すき」


 ぎゅうっと抱き締めたあたしに、日向は嬉しそうな声で笑う。


「僕も、大好きだ」


 それだけで、こんなにも心は満たされる。


「あかりちゃん、ひどい顔」


「うるさい~」


 口ではこんなことを言う日向だったけど、その顔は今までで一番嬉しそうで、幸せそうだった。
< 195 / 203 >

この作品をシェア

pagetop