あの夏の空に掌をかざして
「夢…みたい」
「夢じゃないよ」
日向が、現実なんだと教えてくれる。
日向の声に、胸に、存在に安心して、あたしは頬に、涙が伝う感触がした。
「ふ…ぅ………ひなた…ひなた………………ひな、た…」
「うん」
嗚咽が漏れだしたあたしの背中を、ぽんぽんと優しく叩いて、宥めてくれる。
声を殺そうとするけど、どうしても止めることができなくて、けれど、日向は優しく「うん、うん」と言うだけだった。
「あたし、も………ひなたが…すき」
ぎゅうっと抱き締めたあたしに、日向は嬉しそうな声で笑う。
「僕も、大好きだ」
それだけで、こんなにも心は満たされる。
「あかりちゃん、ひどい顔」
「うるさい~」
口ではこんなことを言う日向だったけど、その顔は今までで一番嬉しそうで、幸せそうだった。