あの夏の空に掌をかざして



「あかりちゃーん?」


 廊下には、日向が立っている。あたしを待って、立っている。


 返事をしないあたしに痺れをきらして、日向がドアノブを掴んだ気配がした。


「……日向、ごめん、今日はいけない…」


 しぼりだした声は、やっぱり涙声で、それに気付いた上で、日向は「分かった…」とだけいった。


 ほっといてくれる日向の優しさが、更にあたしを苦しめる。


 ……ごめん、ごめん日向……けどあたし、今日はやすみたいの。


 きっと、日向は今日も死ぬのだろう。あたしが助けないから、すぐに死んでしまう。


「……ごめんっ」


 それでもあたしは、弱いから、どうすることも出来なかった。
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