fantasista
一通りファン対応を終え、戸崎はため息をついて水を飲む。
そんな戸崎を見て、昔よりもがっしりしたなとか、焼けたなとか思う。
身長も伸びたようだ。
そして、やっぱり目を逸らしてしまうあたし。
これ以上、戸崎に嵌ってはいけないと思った。
だって……
あの頃は幸せだった。
戸崎といて、恐ろしいほど幸せだった。
「それで、話の続きだけど……」
戸崎はそう言ってあたしを見る。
「お前、何やってんだ?」
「何やってるって、何よ」
「相変わらずキツイ性格だな」
「うるさいわね!」
昔から戸崎の前では可愛くなれなかった。
一年半も付き合っていたのに、友達みたいな関係だった。
あの頃、あたしがもっと素直に甘えていたら……結果は違ったのかもしれない。
素直に甘えられないほど、自分がおかしくなるほど、戸崎のことが好きだった。