fantasista




「でも、さっきは戸崎のこと、盗み見てたじゃん」




その言葉に何も言えなくなる。




「俺もさ、高校時代の彼女二人を戸崎に寝取られて、正直恨みしかないんだ」





そうなんだ。

竹中君も辛い思いをしたんだね。




そう言う以前に、戸崎のことしか考えられなくなる。

戸崎が人の彼女まで寝取っていたと聞いて、愕然とする。

戸崎はどういうつもりで人を抱いたんだろう。

あたしは、そんな軽い気持ちで身体を許すことなんて出来ない。






「もしさ、山形が俺みたいに戸崎のことを恨んでいるなら……

俺と寝ようよ」



「え……」



「一回戸崎を裏切ったら、戸崎の過去なんて忘れられるかもしれない」





竹中君は人のいい顔で笑った。

爽やかな笑いなのに、なぜか怖かった。




< 170 / 244 >

この作品をシェア

pagetop