fantasista







どのくらい時間が経っただろう。

あたしは泣き続け、戸崎は黙ってあたしを抱きしめていた。

泣くとか迷惑な女だ。

迷惑な上に、裏切り者だ。

こんな最低なあたしが取るべき行動はただ一つ。




「戸崎……」




震える声で戸崎を呼ぶ。

もう、泣いてはいけない。

最後くらい笑顔で終わらなきゃ。

口をきゅっと結び、努めて元気な笑顔を作る。




「ありがと……



「離さねぇから」





あたしの言葉を遮った戸崎を、驚いて見た。

戸崎は真剣な瞳であたしを見ていて。

その瞳から目が離せなくなる。



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