【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1


「初代から受け継がれる、直系の女限定の力……治癒力が、御園の地盤を固めてくれているようなものなんだ。恐らく、御園はそれで始まった……だから、終わりも、その血が、女が生まれなくなる日なんだろうよ」


自嘲する相馬は、分かっているのだろう。


自分のしている行為が、何の実も成さないことを。



「俺は、兄さんの代わりに家を継ぐ。あの家の表の姿を繁栄させて、裏の…姉さんだけしか持たないあの力に頼りきるような家を終わりにしたい」


この人は、優しい人だ。


「姉さんを母さんみたいにしたくない」


自分の傷を、未来に繋げるために使う。


それが、自分の心を傷つけても。


「兄さんや、水樹や氷月…あいつらだって、子孫は作るだろう。けど、大事なのは、この血だ。兄さんに子供ができなくても、俺が子供を作りさえすれば、兄さんにも姉さんにも水樹にも氷月にも…負担をかけずに、幸せになってもらえる」


五人兄弟のなかで、唯一、力を持ち、周囲の期待と責任を一身に背負っている相馬のお姉さん。


そんな姉を守りたいから……重さに押し潰され、死んだ母親の二の舞にしたくないからと、彼は、偽りの笑みを浮かべて、世間を渡り歩くのか。


たった、一人。


将来、妻にする相手にも偽り続けて。


< 225 / 425 >

この作品をシェア

pagetop