【完】☆真実の“愛”―見つけた、愛―1



「ゆ、柚香!麻衣子に、説明して……」


懇願されて、私は首をかしげた。


「別にいいんじゃありません?女を連れ込んでいたのは、事実でしょ。いやー、麻衣子さんは、素晴らしい奥さんになりそうですね」


沙耶のお兄ちゃんである勇真さんとは、沙耶と幼馴染みであるのだから、幼い頃からの付き合いである。


つまり、昔の愚行も知ってる。


「見捨てるのか!」


嘆く、勇真さん。


「沙耶を置き去りにして、京都に消えたでしょうが!」


怒る、麻衣子さん。


「……えーと、放っておいて良いわけ?」


戸惑う澪に、微笑んで。


「いいのよ」


勝手に台所に向かう。


この家には、幾度なく来たことがある。


沙耶とは、ずっと一緒にいたから。


これからも、いるから。


――手伝います。


ついてきた真姫は、そう言って、笑う。


初めて、生徒会長としてあったとき。


真姫は、死んでいた。


感情などない、お人形が目の前にあるようで。


だから、信頼できる沙耶に任せた。


すると、今や、真姫は笑って、くるくると表情を変える、一人の人間の女の子に戻ってる。



沙耶は、すごい子だ。


周囲にいる人間が異常だと彼女は言うが、沙耶だって普通と比べれば、だいぶ、異常な人間である。



何でもできて、美人で、モテるからこそ、嫌われる。遠ざけられる。


だから、沙耶は自分は嫌われものだと思ってる。


両親の培った権力があるから、周りに人が絶えずにいるのだと。


けど、それは間違いだ。



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