アフタースクールラヴストーリー
芽吹きと一杯のコーヒー

全高は入学式の次の日から、二、三年生の授業が始まる。
僕は一年生の副担任だが、授業は三年生の政治経済を担当する。
そのため僕も今日から授業がある。
これまで非常勤講師として勤めていたので授業はやってきたが、正式な教員として授業は今日が初めて。
当然立場が変わったからといって授業の内容が変わるわけではないが、それでも今日はどこか特別な気持ちを抱いてしまう。
教員として活動することへの期待と不安。
その二つが入り混じった緊張が、僕の胸を焦がす。
どんな授業をしようか、これから生徒達に何をどう伝えていこうか……。
様々なことを考えながら、職員室の自分の机に座っていた。

「久田先生、おはようございます」

声に反応して振り向くと、隣の席には御手洗先生の姿がある。
 
「今日から授業が始まるね。緊張してる?」
「ええ、まあ。非常勤の時に何度もやっているはずなんですけどね」
「いや、それでもやっぱり緊張するよ。僕も教師になって何年か経つけど、一年の初めだけはどうしてもね。それが知らない子ばかりのクラスの時はなおさらだよ」
「確かに少しでも知っているのと、全く知らないのでは大違いですよね」
「うん。これから一年間授業をしていく上で大切なのは、そのクラスの空気を上手に掴めるかどうかだ。それには最初の授業が肝心。お互い、頑張ろう」
「はい」

クラスの空気を掴む。
そうしていかに自分が授業をしやすい状態に変えていくか、これは教師として必要な技術だと思う。
僕のような赴任してきたばかりの教師は知っている生徒が誰もいないから、特に配慮しないといけない。


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