アフタースクールラヴストーリー

「この春からお世話になります、久田翔一郎(ひさだしょういちろう)です。教科は社会で、主に三年生の政治・経済を担当します。よろしくお願いします」

朝の職員会議での自己紹介。
話し終えて僕が一礼すると、まばらに拍手が起こる。
教師になった、その実感が少しだけ湧いた。

「なかなか気合の入った挨拶だったね」

用意された自分の席に着くと、一人の男性教師が話しかけてきた。
僕の指導教員の御手洗悟(みたらいさとる)先生だ。
今年で三十歳になる、背の高いダンディなイケメン。
顔の彫りが深く目力も強いので、男性の僕から見てもかっこいいと感じる。
慕っている男子生徒も多く女子生徒にも人気があるそうだが、既に結婚されており、子どもも二人いる。

「初めは戸惑うことも多いと思うけど、その元気だけを忘れずに頑張ればなんとかなる。この学校は荒れた生徒はいないし、比較的働きやすいんじゃないかな。もしも不安なこととかあったら遠慮なく聞いてくれ」

さすが生徒からの信頼も厚い先生である。気さくに話しかけてくれるし、顔だけじゃなく発言も頼もしい。



「それでは皆さん、これから一年間よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」

職員会議が終わった。
今日は始業式なので、この後体育館に集まらなければならないのだが、それまでにはまだ時間がある。
御手洗先生は引率するクラスがあるからと先に行ってしまい、僅かな間だが手持無沙汰だ。
ちなみに全高は始業式で新しいクラスの担任が発表されるが、引率するクラスと担任になるクラスは特に関係なく、引率したクラスとは異なるクラスの担任になることはよくあるそうだ。

「久田先生、ちょっと手伝っていただいてもいいかしら」

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