すれ違った鍵の音……
 課長と一緒に、マンション建築の現場へと足を運んだ。

 現場代人の佐藤さんとの打ち合わせに、私も同行した。

 時々、お世話になる業者で、下請けの職人さん達とも顔なじみだ。

 軽く、挨拶を交わし打ち合わせを始めた。


 課長の言葉を聞きながら、必要と思われる物を、タブレットから探がし出す。
 もちろん、佐藤さんの言葉にも耳を傾け、より分かり易い物を提示する。
 
 打ち合わせが済むと、タブレットや資料を鞄に収めた。


「矢崎さん!」

 声をかけてきたのは、現場で働く職人の若者三人だ……

「お疲れ様です」

「打ち合わせ?」
 職人の一人が言った。


「ええ。今日も暑い中大変ですね……」


「でも、矢崎さんの顔を見られたから大丈夫!」

 声を出して笑っていると……


「お前ら! 又、サボって!」

 親方の声に、三人は慌てて仕事へと戻って行った。

 一番後ろにいた一人が、振り向きニコリと笑ったので、私も笑顔を返した。


「行くぞ!」

 頭の上からの課長の声に、鞄を肩にかけ歩き出した。


「矢崎さん、お疲れ様!」

 又、別の職人が声を掛けてくれる。私は笑顔を返した。



 課長の運転する現場からの帰りの車の中……


「お前、下請けから偉く人気だな……」

「そうですか? でも、コミュニケーションちゃんととっといた方が、色々とスムーズに行くじゃないですか?」

「ふーん」

 課長は、興味無さ気に前を向いたまま、ハンドルを握っていた。

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