副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 思わず全身に緊張が走り、目を丸めながらも軽く会釈をして慌ててトイレの外へ出る。

「明日奈。急がないと午後一番の合同会議、遅れたら大変なんだからね!」

「ちょ、ちょっと真希、声が大きいよ……!」

 唇の前に人差し指を立てながら、今にも走り出しそうな勢いで足踏みをしていた真希に駆け寄った。

「明日奈あんた、また秘書室にびびってるの?」

 持ってくれていた書類の入った紙袋を私に押し付けながら、わざとらしく大袈裟に溜め息をつく彼女。

「そういうわけじゃないんだけど……。改めて近くで見ると、は、迫力がすごいなぁって思って」

 引きつった笑みを浮かべると、彼女は眉根を寄せてさらに深く息をついた。

「このフロアって重役たちの部屋と秘書室しかないでしょ? だから、昼休憩の時間なんかは特に秘書室に占拠されてるらしいわよ。ほとんど彼女たちのパウダールームと同じだって」

 長い脚でどんどん先を行く彼女に、慌ててついていく。
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