副社長はウブな秘書を可愛がりたくてたまらない
 そして目の前にしゃがみ込んだ彼は私の顔を覗き込むと、柔らかな薄笑みを浮かべる。

 思わず胸を高鳴らせるけれど、私はグッと口をへの字に結んだ。

「また困ってる顔してる」

「当然です! どうしてこんな……。副社長と一緒に住むなんて、出来るわけないじゃないですか」

 私が怒っているというのに、彼はクスッと小さく笑みを零す。

 ……また、こんなときまで。

 眉根を寄せると、彼はこちらを見つめながら困ったように笑った。

「ごめん。でも俺、本当に君の困った顔が好きみたいだ。だから今も、可愛くて仕方ないと思ってる」

 甘く囁かれた言葉に、頬には一気に熱が上る。それを見た彼は、嬉しそうにさらに目尻を垂らした。

「俺と賭けをしよう。期間は、そうだな……大企業の役員たちが招待された大きなパーティがある、三ヶ月後まで。それまでに君が俺を好きにならなければ、君を解放する」

「そ、そんなの、困ります!」

 それって三ヶ月、ここで一緒に暮らすってことでしょう!?

「君を離したくないんだ。君もその間、俺で男を知ればいい」

 彼は私の手を取ると、軽く音を立てて口付けを落とした。

 思わずビクリと身体を跳ねさせると、彼は目線だけを上げて妖艶に笑う。
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