初めてのズル休み
「もう、どこにも逃げられないぞ……?」
壁と暁さんの腕とに挟まれて。
「この先、どこにも逃がしたりしない。おまえは、ずっと俺の傍にいる。いいな……?」
長めの前髪が目にかかり、憂いを帯びる。
それでいて、身も心も捕らえてしまうほどの強い眼差し。
私は、操られるように頷く。
「俺も、不器用で頑張り過ぎて疲れたおまえを一人にはしないから」
笑顔で返したいのに、口元が歪んで上手く笑えない。
一筋の涙が頬を伝った。
「……チョコレート、ありがと」
そう言って微笑んだ暁さんの顔は、これまで見て来たどの表情よりも魅力的で心臓を撃ち抜かれる。
やっぱり、私は暁さんには敵わない。
暁さんの指にあったチョコレートは、そのまま暁さんの口の中へと消えて行った。
迫るだけ迫っといて、結局自分で食べちゃうなんて。
私の方が戸惑って逃げていたくせに、いざあっさりとその口元に放り込まれてしまうと肩透かしをくらったような気分になった。
「なに? その表情。もっと、迫られたかった……?」
「……し、知りませんっ!」
横目で意地悪な笑顔を見せる暁さんに、また悔しくなる。
ぷいっと顔を背けたら、素早く顎を掴まれ暁さんの方へと顔を向けさせられた。
「な、なんですか――」
咄嗟に発した言葉は、その唇の中に閉じ込められる。
甘いキス――。
甘くて、痺れて、すぐに身体から力が抜ける。