その恋、記憶にございませんっ!
古いアパートの錆びた鉄の階段を上りながら、蘇芳は思う。
なんかこれはこれで風情があっていいような。
下の階が鉢で育てているらしいトケイソウの蔓が手すりに巻き付いているのもなんだかご愛嬌だ。
二階か。
物騒だな。
侵入者が窓から入ってきそうだ。
俺は玄関から入るが、と思いながら、軽く唯の部屋のドアをノックする。
「蘇芳だ。
おはよう」
言いながら、もうドアを開けていた。
警察が令状を持って踏み込む勢いで開けなければ、逃げられる気がしたからだ。