ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

それだけで、美姫が何も言わなくても峯岸は充分だった。


「今日は、ここまで」


まだ、触れたい美姫とは違い、スッと、離れた男はあっさりとしている。


自分との温度差の違いに、傷つく美姫。


先に仕掛けてきたのは峯岸なのに…


何か言いたげに峯岸を見つめる美姫に、男は妖しく笑って言った。


「物足りないぐらいが今度会う時まで、忘れられないだろう」と…


確かに、忘れられそうにない。


それどころかあんなキスをされて、浜田とキスをできるのだろうか?


ずるい…


美姫の心を乱し、浜田に罪悪感を持つ隙間もないぐらい峯岸を求めキスに夢中にさせ、いつ会えるかわからないのに、浜田とのキスを思い出せないほど刺激的なキスを簡単に終わらせ、物足りなさを残し別れようとする。


本当にずるい男だ。


「今度っていつ?峯岸さんに会いたい時はどうすればいいの?」


浜田に罪悪感を感じるより先に、峯岸との次が大事になっていた。


「いつかはわからない。会いたくなったら俺から行く」


そんな不確かな言葉を聞きたかった訳じゃない。


「忘れるな…美姫の彼氏は浜田だ。俺は、男のいる女に手を出す悪い男だと忘れるな」
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