ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

「彼は知ってるの?」


美姫は、首を左右にゆっくりとふった。


「知らせるべきよ」


「私が望んで産むんです。生理がこなくて不安でも彼に連絡して相談しようって思わなかった。考えていたのは産む時の事や産んだ後の事だけだったんです。でも、妊娠してるよって先生に言われて、不安だった事が嘘のように消えました。お腹に彼の赤ちゃんがいるって…嬉しくて…この子を産んで抱きしめてあげたい。私のところに、生まれてきてくれてありがとうって言いたい」


「産んで育てるって大変なことなのよ。それを1人で頑張るつもりなの?」


「できるだけそうしたいって思ってます」


「バカね…私はあなたのなに?友達でしょう!美姫が産むって決めたなら、私にできることは協力するわ。だから、1人で頑張るって言わないの。誰かに甘えることも赤ちゃんの為にも必要なことだって思うの。あなたのご両親にだって…」


「…未婚で出産って怒られると思います」


「それがなに?産むって決めたなら怒られるぐらい我慢して、協力してもらうの。あなたの為じゃなく、生まれてくるその子の為に」


「…そうですよね。この子の為になるなら怒られるぐらい平気です」
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