ずるい男 〜駆け引きは甘い罠〜

歩道の地面にお尻から倒れる浜田を、女が駆け寄り峯岸を睨んでいた。


「なにするの?あなたが怒る筋合いはないはずよ」


峯岸を睨む女に見覚えがある事を思い出した。


「確か、Forestで会った時…」


「そうよ。美姫の友達…今、美姫がどんなに大変な決意でいるか知らないくせに…それによく、浜田さんにこんな真似できるわね」


女の口を黙らせるように、浜田が何も言うなと首を横に振り、立ち上がった。


「峯岸、一発殴らせろ」


そう言われるや否、峯岸は地面に手をついていた。


「美姫は妊娠してる。お腹の子は僕の子じゃないって言うなら誰の子だ?」


驚いて、言葉が出ない峯岸に手を差し伸べ立たせた浜田。


「僕たちは、終わってるんだ。美姫は、僕の側にいるより、振り向いてもらえないお前を選んだ。そして、1人で産むと決めた美姫の気持ちがわかるか?」


峯岸は、熱くなる感情に居ても立っても居られなくなる。


美姫に会わなければ…


1人で俺たちの子を産ませたくない。


彼女の側にいたい…


美姫を捕まえなければ、逃げてしまう


と心の底から焦っていた。


この時、零の気持ちがわかった気がしたのだ。
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