王子様の溺愛【完】※番外編更新中
学校を出て、いつもと違う道のりを歩く。


その道はカフェやショップが建ち並んでおり、放課後になると学生で賑わっていた。


「縁は行きたいところはある?」

「本屋さんに行ってもいいですか? 好きな作家さんの代表作の新装版が出ているんです」


(そんなに畏まらなくてもいいのに……小動物っぽくて可愛いけどさ)


おずおずと尋ねる縁に、依人は零れそうな笑いを噛み殺すと、「いいよ」と頭を撫でて応えた。


二人はカフェが併設されている大きな書店へ赴いた。


「すぐ買ってきますねっ」


縁は入口付近で平積みされていた鈍器としても使えそうな分厚い単行本を手にレジへ向かった。


依人はレジから近い新刊のコーナーに場所を移し、縁を待つことにした。


(本当に本好きだよな……祭りで図書券をあげた時も凄く喜んでた)


依人はその時の縁の喜んだ顔を思い出し、頬が緩みそうになるのを堪えていた。


そうやって縁を待っている最中だった。


「きゃあっ、桜宮せんぱーい」
「こんにちはぁっ」


語尾にハートマークが付いていそうな女子の甲高い声が依人に向けられた。


声のする方へ顔を向けると、同じ学校の女子生徒が二人いた。


彼女達は、一年の縁とは違う深緑のスカーフを身に付けていた。


因みに女子は学年毎にスカーフの色が異なっていた。
一年は臙脂、二年は深緑、三年は青と決まっている。


「こんにちは」


関わりはなくとも後輩を無視するわけにはいかず、ひとまず笑みを浮かべながら挨拶をする。


「今、お一人なんですか?」
「良かったら、今からあたし達と遊びませんかぁ?」


彼女達は上目遣いで依人を見つめながら猫なで声で誘いかけた。
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