王子様の溺愛【完】※番外編更新中





「今日はごめんなさい……」


ようやく涙腺が落ち着き、縁は頬を染めて恥ずかしげに依人に謝った。


「いいよ。これからも俺の傍にいてくれるなら」


(先輩は優し過ぎます……あたしには勿体ない人だよ)


「先輩がいいなら傍にいたいです。いさせてください」


縁は自ら依人に抱き着いた。


依人の体温に包まれると毎回鼓動が暴れてしまう。
しかし、それと同時に幸せな気持ちが満たされていくのを実感した。


「あたし、キスやぎゅってされるの、先輩じゃないと嫌です」


井坂の件で改めて思い知らされた。
心はもう依人しか受け入れられなくなっているのだと、日に日に依人への想いが大きくなっていたのだと。


依人がいなくなったら、自分は兎みたいに寂しさに押し潰されて死んでしまうのではないかと思ったりもした。


「あんまり可愛いこと言うと、抑えられなくなる」

「へ?」


何を抑えているんだろう……と縁は不思議そうに首を傾げると、依人は小さな笑いを零した。


「今から俺の気が済むまで……キスしてもいい?」


耳元で囁かれた声はひたすら甘くて、縁の頬は湯気が出てもおかしくないほど赤らんできた。


「ま、待ってください……」


キスは依人としかしたくないのは紛れもない事実だ。


しかし、今からしようと言われて、分かりましたと頷けるほど心の準備は出来ていなかった。


「だめ。もう待てない」

「え、そんなっ……」


依人は、そんな慌てふためく縁の有無を言わさぬように顎を上げると、ゆっくりと唇を重ね合わせた。


依人の宣言通り、キスはいつもより長く回数が多かった。


「せんぱい……もう、むりっ」


縁の心の余裕はもうほとんど残っておらず、心臓は高鳴りすぎて壊れそうだ。


それなのに、限界を訴えても依人はやめる気配すら見せずまた縁の小さな唇を塞いでいく。


「あの男のことなんか全部忘れて、俺でいっぱいになって、俺のことだけ考えていて?」


(もうとっくに先輩でいっぱいです!)


縁はそう返したかったが、縁の唇から洩れたのはくぐもった甘い声だけだった。






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