王子様の溺愛【完】※番外編更新中
ドアを開けると、私服姿の依人が目の前にいた。


Vネックの黒のTシャツに、少しだけダメージの入った青のジーンズとシンプルな装いだったが、制服姿と違って大人っぽく映る。


襟から覗く鎖骨は色気を醸し出していた。


「おはよう、ございます……」


(先輩、私服も格好いいとか反則ですよっ)


縁は内心依人に突っ込みを入れながら、ぺこりと頭を下げた。


「おはよう、縁」


依人は夏の太陽に負けないほど眩しい笑顔を浮かべた。


「あの、お迎えありがとうございましたっ」


麗しい笑顔を直視出来なくて、縁はお礼を言いながらまた頭を下げた。


「いつもセーラー服だからなんか新鮮だね。そのワンピース似合ってて可愛い」

「そうですか?」


正直、ファッションセンスに自信がないので、お世辞だとしても可愛いと言われてホッと安堵した。


「うん。やっぱり迎えに来て正解だよ」


依人は小さく独りごちると、縁の指を絡ませて手を繋いだ。


(わわっ、)


何度されても恋人繋ぎは慣れそうになく、鼓動が暴れ続ける。


「今日も暑いですね」

「そうだね。今日は猛暑日になるって天気予報で言ってた」

「溶けちゃいますよ」

「縁って色白だから見るからに暑さに弱いね」


依人は気休め程度に空いた手を団扇代わりに縁に扇いでやった。
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