俺様ドクターに捕獲されました
満足がいく香りになったことに安堵して、笑顔を作ってから、くるりと身体を翻し足湯をしているお客様に声をかける。
「お待たせしました。準備ができましたので、トリートメントのほうを始めさせていただきますね」
「はい、よろしくお願いします」
緊張した様子でぺこりと頭を下げた今日最後のお客様は、二十五歳の若い女性だ。
予約されているのは、ボディトリートメントの六十分コース。お客様の足元にしゃがみこみ、濡れた足を丁寧に拭いていく。
ベッドにうつぶせで寝てもらってから、手に調合したオイルをつける。今日のお客様は、アロマトリートメント自体は初めてではないものの、うちのサロンは初めてで緊張ぎみだ。
まずは、その緊張をほぐしていかなければ。
「左足から始めますね。だんだん、アロマの香りが届くようになるので、ぜひ、香りも楽しんでください」
緊張をほぐすように声をかけながら、左足に触れていく。
わあ、見ただけでわかるくらい、肩こりがひどい。膀胱も弱ってるし、立ち仕事をしている人かな。
「肩こりが、ひどそうですね。それから、むくみやすくないですか? 立ち仕事が多いお仕事でしょうか」
「え? わかるんですか?」
「ええ、足を見ればなんとなく。働き者の足ですね」
少し、外に体重がかかりぎみで、後ろ重心か。かかとが、ずいぶん硬くなっている。
かかとというのは、意外にも女性にとって大切な骨盤や子宮に関わっているのだ。