俺様ドクターに捕獲されました


「でも、私は逃げ出しちゃったもん。だから、なんか看護師さんたちにも引け目を感じちゃって……。みんな、冷たいし」


視線を落としてモゴモゴとそう口にする私の頭を、彼の大きな手がなでる。


「なら、実力で認めさせればいい。俺は、セラピストとしてのりいを信頼している。だから、この依頼をしたんだ。結果を出せ。それで、まわりを黙らせろ。りいなら、できるだろ?」


ギラりと光った彼の瞳に見据えられて、ビクリと身体が強張る。だけど、私にそれができるだろうか。


自信がなくて俯く私の顎を、彼の手が持ち上げた。


「ほら、できるって言え。今なら大丈夫だろ。俺がそばにいるんだからな。できないとは言わせない。お前の手は、魔法の手だ。自身を持て。不安なら、俺が全部取り払ってやる。なにかあったら、絶対に駆けつける。だから、がんばれ、りい」


そうだ。もう逃げたくないと思ったから、メディカルアロマの勉強をしてきた。自信は、相変わらずないけれど、これはチャンスなんだ。


あのとき乗り越えられなかったことを、乗り越えられたら、弱い自分とサヨナラできるかもしれない。


「……できる」

「それでこそ、俺のりいだ。これからはなにかあったら、絶対に俺に言えよ。りいが一番辛かったときに、そばにいてやれなくてごめんな」

「だから、優ちゃんが謝ることじゃないって。逃げ出したのは、私だし」



その瞬間、空気が変わった。あ、余計なこと言ったな、これ。

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