俺様ドクターに捕獲されました
もう一度、この建物が住所と合っているかを確認して、大きなため息をつく。
残念なことに、合っている。
こんなところに住んでいるということは、やっぱりお金持ちのマダムかなぁ。
佳乃さんのお客さんは、旦那さんの関係もあるのかセレブな方が多いのだ。そんな人に対し、本当にド庶民な私で大丈夫なのだろうか……。
副店長という立場で、佳乃さんの顔に泥を塗るようなことはあってはならない。それが大きなプレッシャーとなり、私の肩に重くのしかかる。
それでなくとも、初めて担当するお客様というのは緊張するのど。
勢いに押されてうなずいてしまったことを激しく後悔するが、今さらどうしようもない。
不安に思いながら、トリートメントに必要なものが入ったバックを抱え直して広いエントランスの中に入った。
うわ、コンシェルジュさんがいる。ビクビクする明らかに挙動不審な私に、品のいい四十代くらいの男性が素敵な笑顔で丁寧にお辞儀をしてくれる。
それに引きつった笑みでお辞儀を返して、重厚な扉の横にあるインターホンの前で、佳乃さんに渡されたメモに目を落とす。
部屋の番号は『三〇一五』。お名前が、『宇佐美(うさみ)様』。
インターホンのボタンを押そうとして、躊躇する。
ちょっと落ち着こう。いくら出張が初めてとはいえ、施術はいつもと変わらないんだから。