空高く、舞い上がれっ。

不器用な時代




『位置について、ヨーイ──……』

昼休みの普通科廊下は、いつもに増して人が集まっている。ザワザワと野次馬の騒ぎ。
トイレから出てきたわたしと寧音は、何が起こっているのか話題に乗りそこねていた。

「おー、始まってる始まってる」

ひょこっと現れた尊が寧音の両肩に手を置く。

「あっち、何してるの~?」

「ん?あれだよ。スキー教室の夜に部屋抜けだしたのバレたやつらが罰掃除してんの」

尊に向いていた目線を野次馬の方へ向け直す。ふ~ん、気の毒だね。と、対して興味なさそうにふるまう。
規則を守らないやつがいけない、これは当然の報いだ‼……なんて、わたしには到底言えない台詞だった。


スキー教室の夜、わたしは輝空くんと一緒に宿舎を抜け出した。
新雪に足を踏み入れ、雪合戦で力いっぱいはしゃいで雪だるまの親子を作って……とてつもなく白い夜を満喫していた。

一歩間違えればわたしもこの罰掃除の仲間入りだったの?っと思うと他人事でもない気がして落ち着かない。
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