通学電車

黒髪の隙間から、彼の涼しげな瞳が覗き、ぱちりと視線が合い、慌てて俯いた。

告白なんかしなきゃよかった。

こんな気まずいのに、その翌朝にこんなに密着しないといけないなんて…っ！

「わあっ」

駅に着き、乗降する乗客の波に飲まれてバランスを崩した。

「おいっ、危ねえな」

ぱしっと腕を引き寄せられ、彼の腕に顔をぶつけた。


「もっとこっち寄れば」

「あ、ありがとう…」


な、なんだ今の……。
か、体が密着してる気が。

……今、私顔真っ赤じゃないかな。
漆黒のガラス窓に映る自分の顔は、困ったようなニヤけたような変な顔をしている。

蛍光灯に照らされ、ぎゅうぎゅうに混んだ車内で、昨日フラれた相手とこんなにくっついてるなんて。

私より頭一つ分高い彼の身長。
ちらりと見上げたら、きれいな顎のラインが見えた。


きゅううっと胸が苦しくて、凝視していられない……。

と思っていたら、彼がつぶやいた。