Fragrance


「ねえ、まだ返事こない」


表参道にあるバー「Bonbons」のカウンターに突っ伏しながら、圭は泣き言を独りでに呟く。


「……お前のそれは、何かのプレイなの?」


呆れたように純也は酒を作りながら、彼女へ言った。


「違うよ!聞いてよ!あいつったらさ。今度の週末戻るとか言ってたのに、仕事が入ったとか言うんだよ。絶対ちがうよね……落ち込む……本当やだ」


「……そんなに好きなら相手のところ行けばいいだろ」


新しく作った酒を純也は圭に差し出す。


空になったグラスを回収して、流し台で洗う。


「……会いに行こうかな」


「おーそーしろそーしろ。フラれたらまたラブホくらいは付き合ってやるよ」


「……最低。頭突きされたところ、まだ痛いんだけど」


「俺の心はもっと痛いんだけど」


「意味わかんない」


新しく差し出された酒を飲みながら、圭は噴き出す。


「純也……」


「何だよ」


「ありがとう」


「別に。会いに行くならサプライズとかやめろよ」


「え?なんで?」


「常識を考えろ。突然押しかけられても相手は迷惑だろ」


予告をしないで会いにいこうと思っていた圭は、痛いところつかれて眉を顰めた。


「べ、別にちゃんと連絡してから行くし」


「ほー、そうか。なら今連絡しろ」


「えー。純也の前だと嫌」


スマートフォンを隠しながら、圭は笑う。


今まで自分の方から彼に対して何もアクションを起こしてこなかったと改めて気が付いた。


フラれたら慰めてくれる友人もいる。


思い切って飛び込んでみよう、そう彼の顔を見ながら圭は思った。




To be next story...【English Pear & Freesia】
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