気づいてくれる?
今日も1日が始まる。

私が勤務している歯科医院は、昔ながらの歯医者さん。
小さいお子さんから、高齢者まで、幅広い年代の患者さんが来院する。

治療も虫歯治療、義歯を作ったり、クリーニングしたりと様々だ。
歯磨き指導も熱心に行っている。
予約制ではあるが、なかなかの忙しさだ。

「大橋さん、3番ユニットの患者さん、スケーリングお願いします」
「はい、今入ります!」

指導の患者さんのカルテを記入していると、助手さんに声をかけられた。

「新患の方です。」

渡されたカルテで、名前、生年月日、病歴、薬歴を確認する。

「失礼します。えっと…松浦修平さん、でよろしいですか?」

「あっ、はい、よろしくお願いします」

ユニットの椅子に座り、目を閉じていた若い男性が、背もたれから背を離し頭を下げた。

(おっ?けっこうなイケメンさんだ)

日々、出会いのない私には、イケメン患者さんは目の保養になる。

「よろしくお願いします。今日担当する大橋です。えっと今日は歯石をお取りする治療をさせていただきますね。」

「はい、…かなりついちゃってるかも…昔からなかなか歯医者って行きづらくて…」

「お子さんのころ、歯医者苦手でしたか?」

治療に使う器具をセットしながら、話を続けてみた。

「そうですねぇ、苦手でした。特にあのキーンって音が…」

思い出しているのか、眉間にシワをよせた表情でさえもイケメンさんは様になるようだ。

だけど…
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