気づいてくれる?
「大丈夫ですよ。私もSではないですから」

私がそういうと、松浦さんは一瞬ポカンとしたあと、

「アハハ!いいね?その返し。うん、面白い!」

声をだし笑ったその笑顔に、私の胸がドキンっ!と大きな音を立てたような気がした。
体が急激に熱くなり、顔、特にマスクのしたはサウナ状態になってきてしまった。

「あっ、えっと、歯石なんですけど、ご心配されてたほどは着いてませんでしたよ?あの、歯周ポケットも深くないようですし、あの、歯磨きも丁寧にされてるようで、磨き残しもなかったです。だから、あの、これからも頑張って磨いて下さい」

ちゃんと説明しなきゃならないのに、胸のドキドキでしどろもどろになってしまった。

「はい、頑張って歯磨きします。でもキーンが怖くなくなったから、また来ます。ありがとう」

笑顔のままそう言った松浦さんが、ゆっくりと立ち上がった。

「そう言っていただけてよかったです。歯は予防が大切になりますので、定期的に検査や歯石除去をされたほうがいいですよ」

ドキドキしすぎてまともに顔なんか見れないけれど、これだけは、笑顔でちゃんと伝えないとと、息を吸い込んだ。

「お大事になさってくださいね」

松浦さんに、私のぎこちない笑顔は届いたのだろうか
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