結構な腕前で!
第十六章
 その週の道場解放日。
 鍵を開けるせとかの後ろで、萌実はちょっと不安そうに周りを見た。

「はるか。あんまり土門の近くにいたら危ないですよ」

 せとかが、すぐ横にいる土門と、土門に寄り添うはるかに言う。
 いつもは何だかんだで萌実の傍には常にせとかがいてくれたのだが、今日はその位置に土門がいる。
 土門が攻撃に加わるためには、もう一人攻撃系の人間がいなければならないので、その関係なのだろうが。

「そうじゃ。はるか殿をお守りするつもりではあるが、何せ相手は煙。予測外の行動を取られると、わしも対応できぬやもしれぬ」

「大丈夫よぉ。私だって攻撃できるんだから」

 はるかと土門は前の柔道の試合から、より一層親密になったような。
 もしかして正式に付き合い始めたのだろうか。

---でも土門くんの投げ技とかを使うためには、結構な範囲を瞬時に固まらせないとだし、そうなるとせとか先輩かせとみ先輩がついたほうがいいものね---

 魔を叩けば灰のようになって固まるが、叩く力が強ければ強いほど、やはり一撃での灰化は広いものだ。
 強い力で殴れば、一撃で砕くことだってできるのだから。

---そりゃ何の力もない土門くんのことを考えれば、サポートは必要だけどさ。私は独り立ちってこと? いや、私は何気に最強だってわかってますよ。いつまでもせとか先輩に甘えてたら駄目だってことだってわかってます。けど力どうこうよりも、せとか先輩に守られるってことが大事なのに!---

 勝手な文句を心の中で垂れていると、ぐい、と肩を掴まれ引き寄せられる。
 顔を上げると、せとみが萌実の肩を抱いて、にこりと笑った。

「大丈夫だって。萌実ちゃんのことは、俺が守ってあげるから」

「はいはい、どうも」

 胡乱な目で、萌実はさっさとせとみの手から逃れる。
 同じ顔でも全くときめかない。

 何故ならこういうせとみのセリフに何度も騙されてきたからだ。
 考えてみれば、せとみが実際ちゃんと守ってくれたことなどない。
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