結構な腕前で!
第二十二章
 さて少し前、いつものように道場で苛々した気分のまま魔を打ち払っていたせとみは、不意に寒気を覚えて振り向いた。
 その途端、道場の扉が、ぎぎぃ~っと開く。

「せとかかぁ? 今更来たって遅ぇんだよ」

 怒鳴り、丁度扇に絡みついていた魔を扉に向かって投げつける。

「はぁっ!!」

 細く開いた扉から、気合いと共に何かが飛び、せとみが投げた魔を串刺しにした。

「せとみ様っ! ご無事ですのっ?」

「うげっ! 何でお前が」

 あからさまに狼狽え、せとみはささーっと道場の奥まで飛び退った。

「茶道部の根暗部長のほうが、あなた様に魔退治を押し付けていると聞いて、飛んできたのですわっ! 安心なさって、わたくしが来たからには、せとみ様の手を煩わすようなことはありませんことよ」

 一瞬で高下駄を脱ぎ、由梨花は道場に飛び込むと、一気にせとみの前まで飛んだ。
 一秒ほどしかかかっていない早業なのに、高下駄はきちんと揃えて入り口に脱がれている。

「ていうか! 何だよ、お前は! わざわざ俺らのシマまで出張って」

「根暗部長がさぼって、せとみ様に全て任せているお陰で、下界まで忙しくてならないんですもの。せとみ様が大変な思いをしているのなら、わたくし自ら出張る労力だって惜しみませんわ。困っているならお呼び立てくださればよろしいのに」

「い、言ってる意味がわからねぇ」

 ずいずいずいっと迫る由梨花に圧倒されながら、せとみは頭を回転させる。
 由梨花の言うことの大半はわけがわからないが、何となく下界にまで魔の影響が及んでいる、ということはわかった。

 だが、そのために華道部があるのだ。
 今に始まったことではないだろうに、何故由梨花がここまで出張ってくる必要があるのか。
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