結構な腕前で!
第二十六章
 次の日、放課後すぐに萌実はせとかに捕まった。

「今日は華道部のほうに行かなくてもいいですよ」

 そう言って、萌実を引っ張り茶道部へと連れて行く。
 いきなり強引に連れ去られ、萌実はちょっとビビった。

「あ、あの、すみません。せとみ先輩に聞いたんですよね」

「え? あ、ええ。南野さんの居眠りの件なら、真行寺さん本人に聞きましたけど」

 山道を歩きながら、せとかが振り返った。
 その途端に萌実はその場にがばっと土下座する。

「す、すみません! わたくし、先輩の顔に泥を塗るような真似をしでかしてしまいました! お許しください!!」

「別に僕の顔は、特に汚れてませんよ」

 ボケなのか真剣なのか、己の頬を撫でながら、せとかが萌実の見下ろした。
 こういう場合は、どう返せばいいのだろうか。

「……いやでも、折角先輩の口利きで華道部へ奉公してましたのに……」

「ああ、そうそう。そういや結局、何らかの成果はあったんですかね?」

「……」

 華道部へ行かされた本来の目的、魔の気配を事前に察知する、ということはできていないし、魔絡みどころか花も活けられるようになっていない。
 裏でも表でも、華道部に行った成果は皆無だ。

「申し訳ございません~~!!」

 せとかの足元で、ひたすら萌実は頭を下げ続けた。

「はは。まぁ南野さんが花を活けられるようになったとは思ってませんから」

 フォローにならないフォローをし、せとかは明るく笑うと、くるりと踵を返した。
 どうやら何の成果もなく帰ってきた萌実を怒っているわけでもなさそうだ。

 だが元々期待していない、というようなこの物言いは微妙である。
 結構打ちのめされて、のろのろとせとかの後をついていく萌実に、せとかは前を向いたまま口を開いた。

「でも、全く成果がなかったわけではないかもしれませんよ?」

「え?」

 きょとんとする萌実ににこりと笑いかけ、せとかは山を登って行った。
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