結構な腕前で!
第二十九章
 そんな濃ゆい週末を終えて、萌実は意気揚々と山を登った。
 やはりせとかの元に戻れるのは嬉しい。

「ただいま戻りました!」

 元気よく挨拶し、がらりと部室の戸を開けると、ど~んとでかい背中が萌実を阻んだ。

「おおっこれは、失礼した」

 土門が振り返り、慌てて横に避ける。

「久しぶり。今日はこっちなの?」

 最近土門はもっぱら柔道部が主だった。
 常に練習が必要なのは向こうなのだから、当然といえば当然なのだが。
 もっとも萌実はここしばらく華道部へ行っていたので、土門がどの程度こちらに来ていたのかは知らないのだが。

「そういえば、南野殿も最近来ておられなんだな。どこかと兼部しておりますのか?」

 さぼる、ということは、端から頭にないらしい。
 別に萌実はさぼっていたわけではないが、当然のように言われ、さりげなく萌実は部室内を見た。
 柔道部に入り浸っていたというはるかは、茶道部をさぼっていた、ということになるのだが、それはいいのだろうか。

「私は部長からの辞令で、華道部へ行ってたんですよ」

 土門は同学年なのだが、向こうが聞きなれないほど堅苦しい話し方なので、どうしても敬語になってしまう。

「ほぉ。花嫁修業の一環ですなぁ。部長も粋なことをしてくれる」

 はっはっは、と土門が豪快に笑う。

「いやぁ、そんな色っぽいことじゃなくて、魔対策ですよ。生け花なんて、結局しなかったし」

 それは寝てしまったが故なのだが。
 萌実が土門と話していると、しぱん、と先程萌実が入ってきた部室の戸が開いた。
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