結構な腕前で!
 せとみからすると、せとかだって由梨花に負けず劣らず変人だ。
 普段のぼーっとした態度であれば、あの家の雰囲気も気にならないだろう。
 が。

「嫌ですよ。真行寺家なんかに行ったら、僕が死んでしまいます」

 その前に、由梨花の心にせとかは欠片も引っかかってない。
 似た者同士は反発するというアレだろうか。

「どちらにしろ、土門に掻っ攫われたわけですから、諦めるしかないですけどね」

「高校生の恋愛のままゴールインする率なんか高くないっつったのはお前だぜ。だったらまだわからねぇ」

「まだ諦めないんですかぁ?」

 思い切り顔をしかめて、せとかがせとみを見る。
 いかにも変なものを見る顔だ。

「一人の人間に、そこまで執着するなんて気が知れませんが」

「お前には純愛がわからんのだな」

「せとみ、よく考えなさい。それはほんとに愛ですか? ただの情ってこともありますよ」

 真面目な顔で言われ、せとみも言葉に詰まる。

「僕だって、はるかやはるみのことは好きですよ。でもそれは恋愛感情じゃない、家族のそれです。上手く言い表せませんが、その違いぐらいはわかります。せとみは、はるかに執着しすぎて、その違いがわからなくなってるんじゃないですか?」

「な、何でそう思う」

「せとみは遊んでるふりをして、実は他に目を向けてこなかった。自分でも、はるかが好きだ、と思い込んでるからですよ。だから家族の情と恋愛感情の区別がつかないんです。少しでも他の子が気になったら、その辺の違いに気付くと思うんですけど」
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